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相撲とデザイン

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相撲とデザイン

先日、友人と大相撲2009年9月場所の14日目を観戦。さすがに年3回の東京場所を毎場所観に行っていると新鮮さも無くなり、午前中10kmランニングしたことも手伝って、途中で寝そうになってしまった。不覚。とはいえ相撲人気はかなりの復活傾向にあるようで、館内はかなりの人でごった返していて、優勝がかかる取り組みともなると盛り上がりは相当だった。
相撲というのはまさに様式美の世界で、序ノ口から幕内まで一日100番以上の取り組みがあるが、どの取り組みも例外なく同じ儀式を淡々とこなしていく。力士も東方西方に振り分けられ、国技館内も東方西方で見事なまでにシンメトリーの構造になっていて、大相撲の興行自体が非常に「整理」された世界を形成している。

その整理された世界を美しい、心地いい、と感じる人もいるだろうし、相撲に興味ない人は退屈に感じるかもしれない。そんな中、場内が一様に盛り上がる瞬間というのが、その整理整頓された世界からはみ出るようなことが起きたとき。高見盛が件のパフォーマンスをしたり、将司が大量の塩を撒いたりすると、相撲通のおじさんであろうと「お前もう二度と国技館にこないだろう」という相撲を見ないでひたすらおしゃべりしている女の子集団だろうと、館内が一斉に大喝采を浴びせたりします。

この考えはビジュアルデザインにも共通するものがある。デザイナーが求められるのは、まずは要素を整理してきちんとレイアウトすること。そんな中でより目立たせたい要素は、あえて整理された世界からはみださせ、ちょっとずらしたり、別の装飾を施したりして他の要素と差別化を図ります。定型と破調をコントロールする訳です。破調があるから定型の整然とした美しさを感じられるし、定型があるから破調がより一層際立つ。まさに相撲の世界観といえるのではないだろうか。おそらく相撲の魅力の大きな要素として、この「定型と破調」のコントラストがあると思います。

相撲とデザイン
淡々とこなされる儀式とシンメトリーな世界。まさに様式美。

もう一つの魅力は、大相撲は非常にうまく「強さのランク」をビジュアルで表現していること。大相撲にはテレビで放送されている幕内力士や横綱だけではなくて、もっと下の地位の序の口や序二段といった階級が存在していて、おそらく初めて相撲を見る人でも「あいつは強そう」とか「あいつは弱そう」ということがすぐに分かるように、力士の髪型や身につける装飾がデザインされている。一番下の地位の序の口と横綱のビジュアル面での違いは歴然だ。

デザイナーは一番目立たせたい見出しの文字とそれほど重要でない文字等を、大きさや太さ、色に差をつけて、それらの情報の重要度をビジュアルで表現する。「文字のジャンプ率」とか言ったりするが、相撲のビジュアルデザインはまさに「強さのジャンプ率」と呼べるほど明快なものだ。上位ランクの幕内力士は色鮮やかな化粧回しに大銀杏、身につける物や座布団まで豪華だが、下位力士はくすんだ色のまわし、大銀杏も無いし、座布団もない。ついでに取り組みを裁く行司まで貧相な身なりだ。

ここまで明確に「強さのランク」がビジュアルデザインされているスポーツはないのではないだろうか? プロ野球で打率が2割5分を切ったらスパイクを脱いで裸足でプレーしなさい、2割を切ったらヘルメットは布製になります、最下位のチームは審判も裸足になります、なんていうルールがもしあったらなんて想像すらできない。

相撲とデザイン
下位力士の取り組み。人もまばら。裁く行司も裸足。

日本古来の伝統芸能は、どれもおそらく非常にデザインされた世界観を持っていて、ビジュアルデザインも洗練されたものではないかと思います。まだ歌舞伎とか能とかは見たことはないけど、相撲と共通するような要素や、デザイン的な新たな発見があるに違いない。という訳でこのブログはデザインのことしか書かないと決めているので、強引に相撲とデザインを結びつけて考えてみました。意外にうまくまとまったような気がするのは俺だけなのだろうか...?

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このブログ記事について

このページは、yamagraが2009年9月27日 17:18に書いたブログ記事です。

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